人生の大切さを描いた映画

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見たい候補リストに貯めていた映画のDVDを、年末年始のお休み時期にたくさん見たのですが、この映画 "PARIS" 、結構よかったです。数年前の作品なので見ている人は多いかも。
監督は『猫が行方不明』を製作したのセドリック・クラピッシュ。ストーリーは、これまで描かれたことがない、”生きている”パリについて。と言ってもパリ独特のことを描いているのではなく、どこの街でも起こりうる人々の日常について、生きていることの大切さを、美しいパリを背景に描いている作品です。
何人かのキャラクターが登場しますが、まず、病に冒されたピエール、弟を案じて同居を始めるシングルマザーのエリーズ。彼らのアパルトマンのベランダから見えるパリの風景はいつもと変わりなく、人々は日々を懸命に生きている。アパルトマンの向かいに住む、美しいソルボンヌの大学生、彼女と関係を持つ歴史学者、彼の弟で「お前は普通すぎる!」と言われ悩む建築家、恋をするマルシェの八百屋、文句ばかりのパン屋の女主人、ファッション業界の女たち、不法移民・・・パッチワークのように紡ぎだされ、クロスしてゆく何気ないパリジャン・パリジェンヌたちの日々。この街は、今日も全てを受け入れ、包み込みながら静かに時を刻んでいる、、。

ラストに、ピエールがタクシーで病院に向かうシーンで、車窓から眺める行き交う人々を見て語る言葉が印象的です。「これがパリ。誰もが不満だらけで、文句を言うのが好き。皆、幸運に気づいていない。歩いて、恋して、口論して、遅刻して、なんという幸せ。気軽にパリで生きられるなんて。」

高校生の時に入院していたことのあるがんセンターの窓から見る通行中の学生の姿を見て、正に同じようなことを思いました。みんな自分がどれだけ幸せか気付いていない。がんセンターの中には重い病人もいっぱいいて、多くの人が亡くなっていくのだけれど、あの外では、自由に健康で暮らせることが、何の不自由もなく未来がある生活を約束されていることが、どんなに幸せなことかと。窓から道を行き交う人々も眺めながら、何日もずっとそんなことを考えていました。16歳で直面するにはちょっと重すぎるテーマで、はじめは戸惑い病院でも泣き暮れていましたが、人間すごいなあと思うのは、悲観も絶望も時間がたつと受け入れるしかないと精神が落ち着いてくるのですね。達観というか悟りの境地とも言うべきか。たぶん、自分自身が精神的におかしくなってしまわないようにするための自己防衛なんでしょうが。それが、この映画に出てくる、死ぬかもしれないことを受け入れているピエールだなと、映画を見ながらいろいろなことを思い出しました。私自身は手術をして1ヶ月程入院しただけで、その後の人生は健康に過ごしていますが、本当に、人生、生きるも死ぬも紙一重のところがあります。当たり前のように私たちは毎日をダラダラと生きていますが、それぞれの人生はリミットがあって、それがいつ終わりなのかわかりません。よく電車に乗っていて思うのは、100年後、この電車の中の人は間違いなく全員死んでいますが、この電車の外の風景は、街は変わらず有り続けるんだろうなということ。シリアスに聞こえますが、でも、そのシリアスなことに目を背けず、一日一日を大切に生きようと思わせてくれる映画です。映画自体は、軽いタッチで描かれているので見やすく、美しいパリの街並も楽しめます。

東京にお住まいのフランス映画好きの方、只今、東京国立近代美術館のフィルムセンターで、現代フランス映画の肖像と題したフィルムイベントが2月末まで開催されていて、レアなフランス映画が見れます。上映スケジュールはこちら
そういえば、恵比寿ガーデンシネマが今月末、シネセゾン渋谷が2月末で閉館してしまうんですよね。両館共、いろいろな単館上映作品を見た想い出があり、寂しくなります。なんだか、自分がCD買ったり映画を見ていた場所が次々無くなっていくんだよね。時代の流れと認めるにはあまりにも想い出ありすぎて。悲しいね。

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