静かにゆらゆらと語りかける映画 「JELLYFISH」

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私はどうも映画をタイムリーに見ることができなくて、公開されてから自分の中で何年か寝かせて、もう見てもいいよと心の準備ができたある日、おいしいお酒や食べ物を用意して、リラックスした時間の中で、大切に見るようにしています。小説もそうで、村上春樹氏の作品なんて、もう何冊寝かせていることか。

そうやって温めていた中から、昨夜は、イスラエル人監督の映画 "Jellyfish" を見ました。確かこの映画は、2007年のカンヌ映画祭で新人監督賞を受賞しています。ストーリーは、イスラエルのテルアビブを舞台に、ごく普通の人々の日常の生活を描いた3つの物語が展開していきます。
物語の1つ、結婚式場でウェイトレスとして働くバティアは、恋人と別れたり職場でもうまくゆかず、生活も厳しい状態。ある日海辺で浮輪をつけた女の子と出会い、自宅に連れて帰ります。そしてこの女の子を面倒みることで、バティア自身の過去を振り返る旅へと導かれていきます。他の物語は、バティアが働いている結婚式場で披露宴をしていた新婚のケレンとマイケル、舞台女優から母の世話を頼まれる、フィリピンら出稼ぎに来ているジョイの話など。
映画のストーリー、映像全体を通して感じる印象は、まずイスラエルのあまり豊かではない生活環境に、鮮やかな色彩と少し疲れたリゾート地を思わせるテルアビブの風景、そこに、ゆる〜くだる〜くニコール・アラルが歌う「ラヴィアンローズ」がマッチし、この映画をより詩的に印象づけています。
インタビューで答えている監督曰く、バティアと少女の話は、架空の子供と会話する知り合いの女の子からインスパイアされたんだとか。心の中に2つの自己を抱え苦しんでいたが、ある時過去を受け入れると、架空の子供が消え人格が統合したのだそう。それをヒントにして、人間の傷つきやすい繊細な心について、また子供時代の記憶と向き合うことについての映画を作ったのだそうです。
華やかで製作費のかけられたハリウッド映画が好きな方には物足りないかもしれないけど、両親からの愛情を求めていた子供の頃の記憶や、過去に縛られてしまった人間の感情を、テルアビブを背景に、静かに穏やかに描いているいい映画です。愛されたいのに口では言えない、しあわせなのに笑顔が苦手って、共感できる人も多いのでは。興味のある人は是非DVDでチェックしてみてね。


ジェリーフィッシュ [DVD]

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