ビン・ラディン殺害に想う


今日昼頃、身支度しながら twitter のタイムラインを見てたら、いきなりオサマ・ビンラディン死亡とのつぶやきが。半信半疑であちこちニュースのサイトを見て、本当だったんですね。驚きながらも、オバマ大統領が会見をするというのでNBC NewsのLive放送で見ました。見逃した方は、こちら から日本語訳が読めますよ。スピーチの中でこの一節が心に響きました。
「警戒を続ける一方で、私たちはアメリカがイスラムと戦っているわけではなく、決してイスラムと戦ったりしないことを、再確認しなくてはなりません。ブッシュ大統領が9/11の直後に述べたように、この国はイスラムに対して戦争するのではないと、私も何度も明言してきました。ビンラディンムスリム指導者ではありませんでした。ビンラディンムスリムの大量殺人を行った人間です。実際にアルカイダは、この国を含めて多くの国で大勢のイスラム教徒を虐殺してきました。それゆえに、ビンラディンの死は、平和と人間の尊厳を信じる全ての人に歓迎されるべきです。」
う〜ん、ちょっと苦しい。罪のない多くの人々も巻き込んで攻撃していたのに偽善的。でも大国アメリカ大統領のスピーチとして、人々の憎しみの対象が、大多数の罪のないイスラム教徒の方々へ再度向かないように配慮した言葉なのはわかります。本当に、過激派は自身の宗教イスラム教徒の人々をも虐殺してきたのだから、平和に暮らしている人々に、今回のことでイスラム叩きが再燃したら、たまったもんじゃありません。そんなことを考えながら、先日見たドキュメンタリー映画ビンラディンを探せ」を思い出しました。これがその映画よん。



スーパーサイズ・ミーモーガン・スパーロック監督のドキュメンタリー映画で、監督自身が出演をし、ガールフレンドの妊娠をきっかけに、生まれてくる子供への平和のため、イスラム諸国を旅してオサマ・ビンラディンを探すという内容。映画序盤から全体を通してかなりの軽いトーンもありますが、旅が始まり、エジプト、モロッコイスラエル、ヨルダン、そしてサウジアラビアアフガニスタンパキスタンと進むに連れ、普段なかなか見聞きすることのないイスラム諸国の人々の生の声や生活の姿に、すっかり映画の中に惹き込まれていきます。訪問する土地土地で現地の人々に、「ビンラディンを探しているんだけど」と話しかけるんですが、ちょっと頭悪そうに聞こえるこの質問、しかしながらこの一言をまず投げかけることで、相手の出方やトーンを伺って、あわよくばその先の本音をうまく聞きだそうというやり方のようで、街行く人々や人権活動家、ジャーナリストや教育関係者、聖職者に権力者、はたまたビンラディン親族にまで、興味深い話を聞きだすことに成功しています。各国の人々のオサマや過激派に対する考え、イスラム教について語る生の声は、同じイスラム教を信じていても考えの違いがはっきり現れていました。特に必見なのは、ムバラク政権崩壊前のエジプトや、パレスチナ人とイスラエル両側から見るパレスチナ問題、言論統制の厳しいビンラディンの生まれ育った国サウジアラビア、30年も戦火にさらされ痛々しい程の貧しさのアフガニスタンです。映画制作は2008年で撮影はその前だと思われますが、昨今のチュニジアやエジプトを始めとしたイスラム民主化運動の背景を知りたい人や、イスラムっていうと何か嫌悪感を持ってしまう人に、是非見てもらいたい映画です。みんな平和を願って暮らす私たちと同じ普通の人々で、イスラム=悪というのは、西洋社会の考え方が勝手に作った間違ったイメージなのだということが理解できます。

最後に私が一番好きな一言は、モロッコの生地屋のおじさんに、ビンラディンをどう思うって質問をして、おじさんが冗談っぽく笑いながら、「クレイジーだ。あれだけ殺して何も達成していない。」と答えるところ。ちょっとブラックだけど、ほんとだ、ってうなずいてしまったよ(ちなみに、おっちゃんはビンラディン擁護派ではなく、反対派の立場で答えています)。

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